伝統構法の家

大工作業の流れ

弊所の大工作業の流れ

手刻み・手加工とよく言われますが、のこぎりで木を切り、のみでほぞ穴を掘るなど、すべてを手道具で行っているわけではありません。
効率も求められる現代の作業では、ある程度の作業を木工機械で行い、最終的な微調整として、組み入れる際の固さ調整を手道具による手作業で行います。
ここでは、弊所の大工作業の流れをご紹介いたします。

1【板図・間竿作成】

設計図が出来上がると、大工は墨付けをする時に見る、板図を手描きで作成します。
板図を作成しながら、内装の仕上がりや、細部の納まり、構造体の組み方、どの部材をどのように組み、どの順番で組み上げるかを想像しながら作成していきます。
また、4.5cm角・長さ4m程度の間竿には建物の高さ方向の位置をすべて描き込んでいきます。大工はこの板図と間竿だけを頼りに家を作り上げていきます。

板図・間竿作成写真

2【名付け・木造り】

製材工場から運ばれてくる材木は、大きさや、樹種により、土台・柱・梁などの部材に分れています。
製材され時間が経った材木は、乾燥することで、反りや、ひねりが生じています。その反り・ひねりを取り除く為、真っ直ぐに、直角に削り直す作業を木造りといいます。
名付けでは、反りの方向、化粧面など木の向きを見ながら、どの木をどの位置に使用するかを決め、“いろは„から始まる番付けをすべての材に名付けていきます。
この作業で、すべての材料を見て、手に取り、触れることとなります。

名付け・木造り写真

3【墨付け】

墨付け写真01

墨壺・墨差し・差し金を使い、柱や梁の長さ、仕口・継手の位置と形、などすべての材木に、1000か所以上ある加工するための線と印を書き込んでいきます。

墨付け写真02

墨付けができたら一人前といわれます。大工になって一つの目標となる憧れの作業ですが、墨付け通りに加工していくため、間違いがあると建物を組み上げることができなくなる為、責任重大な作業となります。

墨付け写真03

墨付け写真04

4【刻み】

材木の平面に墨付けされたものを、立体的に加工していきます。
電動工具・木工機械である程度加工して、2厘(0.6mm)程度の微調整を、のみ・鉋など手道具で行います。
この固さの微調整がしっかりとした構造体を生み出す重要な作業になります。

刻み写真

5【仕上げ】

仕上げ写真01

化粧面となる柱などを、一本一本鉋で仕上げていきます。
鉋で仕上げられた材木は、表面が円滑になり鏡の様に物を映し出すまでになります。
仕上げられた材木に汚れ防止の紙を巻いていきます。布海苔(ふのり:海藻から作られたのり)を使い養生紙を材木に貼りつけていきます。
手間はかかりますが、左官仕上げが終わるまではがす事が無いように、化粧面のみ貼る工夫をしています。

仕上げ写真02

6【建て方】

建て方写真01

刻んだ材料を組み上げていきます。
伝統構法では墨付けの段階で決めた順番通りでないと組み上げることができない為、慎重に作業を進めます。
また、加工に間違いがあると組み上げることができない為、一ヵ所一ヵ所、答え合わせをしているような感覚で、緊張の連続です。

建て方写真02

7【えつり・壁付け】

えつり・壁付け写真01

建て方が終わり壁貫を通し終わると、えつり・左官職人が入ります。
えつり職人により壁貫に、一本一本、竹をくくり付け格子状に編まれていきます。約3cmのマス目になり、壁土が引っかかる事で持たせます。壁の重みで下がる事を考慮し編まれています。

えつり・壁付け写真02

えつりが終わると、左官職人により裏表から壁が付けられます。捏ね役・差し役(渡し役)・塗り役、3人一組で作業を進めます。

えつり・壁付け写真03

8【大工造作】

荒壁が乾くと、造作とよばれる内外装工事が始まります。
天井や床、外壁などを貼り、仕上げていきます。階段が架けられ、キッチン、浴室が出来上がり、徐々に家らしくなっていきます。
同時に電気配線、水道配管が通され、設備の下準備が行われます。

大工造作写真

9【左官仕上げ】

左官職人による土壁の仕上げが始まります。
土壁の仕上げには土の種類、配合、塗り方により様々な表情を見せます。
また荒壁から付けられた厚みのある土壁には調湿効果、免震性がある優れた素材です。土には独特の質感があり美しい仕上がりとなります。

左官仕上げ写真

10【完成】

完成写真

電気・水道設備が整えられ、建具職人により建具が納められます。木製建具は、様々なデザインの美しい建具が作成できます。
畳職人により畳も納められます。い草の香りが漂う、心地よい空間が仕上がります。