伝統構法の家

伝統構法

伝統構法への考え

伝統構法写真

伝統構法は長い年月を経て、経験的に得た知識、技術を、進化させながら受け継がれてきました。
現代の木造住宅では作業の効率化、工期の短縮、低コスト化が図られ、便利で性能の良い住宅へと変化し、伝統構法による住宅は全体の1%にも満たない珍しい存在になりました。
不便でもすべて昔のままの伝統構法が良いとは思いません。新しい素材、工法を学び、快適であり、木組みの美しさ、自然素材の心地よさを感じられる進化した伝統構法の家造りをしたいと考えています。

【木組み】

木組み写真01

伝統構法による木組みは、長年受け継がれてきた日本独自の文化です。
大工が、一本、一本、木の反り・ひねり・向きを見ながらどのような組み方をするか熟慮しながら、仕口・継手といわれる加工をしていきます。
一般的な住宅で、柱、梁など骨組みとなる構造材は、約350本、仕口・継手などの加工は、1000か所以上になります。

木組み写真02

材木は、仕口・継手を作る為、ほぞ穴を掘り、欠き取るなどの手を加えるほどそれぞれの材は弱くなっていきます。
しかし、どちらの材をどれだけ欠き取るかを考慮し、互いをいため合い加工した材を組み合わせることで、互いに補強し合う一つの構造体となります。
金物に頼ることなく、木を組むことにより、柔軟でねばり強く、そして美しい構造体となります。

【在来構法と伝統構法の軸組みの違い】

在来構法と伝統構法の軸組みの違い写真01

現在主流の在来構法とは、主にプレカットにより加工された構造材で、柱に、浅く掘られたほぞ穴に、構造材を差し込み、ボルトにより引きよせ、金物で固めます。
一方、伝統構法では、柱を貫通させたほぞ穴に、構造材を差し込み、木の栓で引きよせます。
伝統構法との違いは、この、柱を貫通させ組みあげる材にあります。柱自体は弱りますが、柱を貫通させ組むことで、外力を受けた時、木がめり込み、構造材全体で柔軟にねばり強く抵抗し、建物を守ります。
柱を貫通させ組みあげる材には、胴差・差し鴨居の他に、壁の下地となる壁貫(通し貫)があります。

在来構法と伝統構法の軸組みの違い写真02

壁貫は、壁となる面すべてに通します。段数が多くても柱が弱る為、建物の高さを考慮し段数を決めます。
そして、もう一つ重要な事が壁貫の厚さです。
通常壁貫は、厚さ5分(15mm)を使用しますが、これでは壁の下地にすぎません。薄いと抵抗力が弱まり、厚いと柱が弱る為、7分(21mm)が最適と考え、7分貫を使用しています。

【土壁】

土壁写真01

伝統構法に欠かす事の出来ないものが土壁です。
粘土質の土に藁苆(わらすさ)と水を加えて攪拌します。
藁苆は時間が経つにつれ分解され、繊維質が残ります。
藁苆を加えて攪拌し寝かせる作業を繰り返すことで、繊維質を多く含む、強度の高い土壁となります。
柱・梁の骨組みの中に、竹を壁貫にくくり付けてえつり(竹小舞)を編んでいき、その表・裏に土壁をつけていきます。
しばらく乾燥させた後、大直し(むら直し)、中塗り、仕上げ塗りと工程を重ねて厚みを増していきます。
厚みを持たせた土壁は、乾燥し固まる事で、一体となり、美しい壁の仕上げ材でありながら、建物を守る耐力壁となります。

土壁写真02

固すぎない土壁は、外力を受けた時、建物の揺れを吸収しながら崩れいく事で、構造体をいためる事なく、ねばり強く抵抗する助力となります。
一般的な住宅に塗り付ける厚さの土壁には断熱効果は期待できませんが、土壁には優れた調湿効果があります。湿度の多い夏場は湿気を土壁が吸収し、湿度が下がることで、涼しく感じられ、快適に過ごすことができます。
また、独特の香りがあり、自然素材で造られた伝統構法の建物は、木・土・草(畳のい草)の香りがまざり合った、快適で心地よい空間に仕上がります。

【自然素材・手加工の欠点】

自然素材・手加工の欠点写真

木は、一本一本性質が違えば、見た目も違います。
自然乾燥し収縮した材木は、反り、ひねり、ひび割れが、それぞれ違う形で生じます。
加工したばかりの導付き(継手・仕口の接合部)には隙間の無いものも、時間が経ちさらに乾燥することで、隙間が生じることもあります。
これを防ぐために材木を強制的に乾燥させる、高温乾燥材があります。高温で乾燥させた材木は、反り、ひねり、表面へのひび割れは少なくなりますが、高温をかけることで、繊維が破壊され木の持つ脂分が失われる為、ねばりがなくなり、内部でのひび割れが生じます。色は茶褐色に変色し、香りは少し焦げた匂いへと変化します。
このように作られた材木は自然素材とは言えません。自然乾燥させた材木を使用することで、木の持つ特性を最大限に引き出すことができます。

職人は完璧を求めて仕事をしています。
しかし人の手である以上完全ではありません。
養生はするものの、現場生産であるがゆえの、キズ、汚れが付くこともあります。もちろんできる限りの対応はしますが、自然素材特有のひび割れや、小さなキズの為に建て替えることはできません。
伝統構法の家は、工業製品である「物」ではなく、大勢の職人が汗を流し、丹精を尽くして造り上げる「作品」であり、自然素材が呼吸している証です。